平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第8番

Das Wohltemperierte Clavier, Book I, No. 8 in Eb minor BWV 853
作曲 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1685-1750)
BWV番号 BWV 853
調性 変ホ短調 (Eb minor) / 嬰ニ短調 (D# minor)
構成 プレリュード + フーガ
フーガ声部数 3声
難易度 上級(深遠な表現力と複雑な対位法)
♭♭♭♭♭♭
B♭ E♭ A♭ D♭ G♭ C♭ — 6つのフラット

※フーガは一般的に嬰ニ短調(6つのシャープ)で記譜されることが多いが、原調は変ホ短調

🌑 変ホ短調 — 深い瞑想、孤独、そして神聖な対話

🎹 プレリュード (Prelude)

4/4拍子 (3/2と解釈も可能)、40小節。非常にゆっくりとした、アリアのような曲。豊かな装飾音と、ため息のような動機が、深い悲しみと慰めを表現します。

構造分析

全体として一つの大きなアーチを描く歌謡形式。
アルペジオによる分散和音と、その上を流れる旋律線。
フランス風の装飾音が随所に散りばめられ、高貴な感情を表出する。

技法的特徴

💡 演奏のポイント
感情的になりすぎず、常に貴族的な抑制を保つこと。和音の移ろいを丁寧に響かせる。

🎼 フーガ (Fugue)

3声のフーガ。87小節。平均律の中でも特に学術的・理論的な傑作として知られます。
主題の拡大 (Augmentation)反行 (Inversion) が駆使され、バッハの対位法技術の粋が尽くされています。

主題(Subject)

D# - E# - F# - A# - G# - F#... (D# minor表記)
Eb - F  - Gb - Bb - Ab - Gb... (Eb minor表記)
跳躍を含みながらも落ち着いた、思索的な主題。

フーガ構造

提示部: mm. 1-12

3つの声部が静かに入ってくる。

展開部: mm. 12-61

様々な技法が繰り出される。

  • mm. 12-19: 反行形によるストレッタ
  • mm. 62-76: 拡大形(主題のリズムが2倍の長さになる)がソプラノに現れる

終結部: mm. 77-87

バスによる拡大形の荘厳な提示と共に、曲は閉じられる。

対位法技法

📚 学習のポイント