平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第4番

Das Wohltemperierte Clavier, Book I, No. 4 in C♯ minor BWV 849
作曲 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1685-1750)
BWV番号 BWV 849
調性 嬰ハ短調 (C♯ minor)
構成 プレリュード + フーガ
フーガ声部数 5声 (平均律第1巻では第22番とこの曲のみ)
難易度 上級(深遠な表現力と多声の弾き分けが必要)
♯♯♯♯
F♯ C♯ G♯ D♯ — 4つのシャープ
🕯️ 嬰ハ短調 — 深き嘆きと崇高な祈り

🎹 プレリュード (Prelude)

6/4拍子、39小節。非常にゆっくりとしたテンポで奏でられる、アリアのような美しい旋律を持つ曲です。左手のアルペジオと、右手の表情豊かなメロディが絡み合い、バッハの最も崇高な叙情詩の一つと称されます。

構造分析

Section A  (mm. 1-14)   │ 主調(C# minor)での主題提示
                         │ 痛切な半音階的下行を含む旋律
Section B  (mm. 14-24)  │ 平行調(E major)や属調への展開
                         │ クライマックスへの高揚
Section A' (mm. 25-39)  │ 主調への回帰とコーダ
                         │ 変化を伴う再現と静かな終結

技法的特徴

💡 演奏のポイント
テンポは Adagio か Lento で。メロディの「歌」を途切れさせないよう、レガート奏法を徹底する。アルペジオの和声感を大切にしつつ、旋律線の抑揚(特に半音階の動き)を丁寧に表現すること。

🎼 フーガ (Fugue)

5声のフーガ。全115小節。平均律曲集の中でも最大規模を誇る「大聖堂」のような建築物。1つの主要主題と2つの対主題を持つ「三重フーガ」的な性格を持ち、圧倒的な密度で展開します。

主題(Subject)

C# - B# - E - D#
(主音 - 導音 - 第3音 - 第2音)
十字架を表すと言われる象徴的な音型(BACHモチーフの変形)
極めて短く、凝縮された主題

フーガ構造

第1部: mm. 1-34

第1主題の提示。低音から高音へと順に積み重なり(B→T1→T2→A→S)、5声の伽藍が築かれる。重厚で厳格な開始。

第2部: mm. 35-72

第2主題(流れるような8分音符の動き)が登場。第1主題と結合し、動きと推進力が加わる。

第3部: mm. 73-115

第3主題(激しいリズム)が加わり、3つの主題が同時に鳴り響く三重対位法の極致。驚異的な緊張感の中で、ペダルポイント上のクライマックスを迎え、最後はC# major(ピカルディ終止)で救済されたかのように終わる。

対位法技法

📚 学習のポイント